すべての群れの客である

大地から5センチくらい浮きながら文章を書くよ!

GOTO豪遊物語 いちにちめ(熱海)

どういうわけだかその前日、私の周りでは人が倒れ続けていた。

遅番で、時間が経つ度に人が消え、最後に立っていたのは私と夜から来た学生が一人だけだった。今まで身をおいてきたあらゆるパーティで、もっとも早く倒れ続けた私にとってはほとんど初めての経験だった。

といってみたけれどそれは嘘だ。すわ学級閉鎖か!?というその瞬間まで立っている人間だったのだ私は。倒れるのはいつでもみんなが元気なときなので、みんなが倒れているときに立っていることをみんなは知らない。だからいつも倒れている人という印象を持たれている。心外だ。

さて、こういう場合にはかならず現場は人員不足と関係なく普段より忙しいのが定石で、客が客をよび、金が金を呼び、滅多におとずれない100万円を5回くらい数える仕事をこなした私は最後にはびっくりするくらい頭が悪くなってしまっていた。それで「(頭が悪くなってしまった!)」とやっていたら大きな声が出ていたらしく、社員の人が「そんなことないよ」と言ってくれた。(幻でなければ)

そんなこんなで、もしかしたらもう二度と起き上がれないのではないかと思ったのだが、なんとか起き上がってGOTO豪遊の日となった。

今回の旅の目的は豪遊であって、その実態には彼の有名な富士屋ホテルに泊まるということだった。ずっと泊まりたかった。でも泊まれなかった。なぜなら私は富士屋ホテルに泊まるだけの、つまり、端的にいって金がなかったのだ。

GOTOさまさまである。

びっくりするような曇天のなか出発した。

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電車に乗っていて、ふと外を見ると、海の真ん中だけに光が産まれていて、もうこの世は終わるのかもしれない、と思ったがそんなことはなかった。

目的地の手前の手前の手前くらいの駅に停車したとき、ドアの向こうをニホンザルが普通にてってけてっててーって歩いていて、なるほどな、と思った。

さて、旅の大目的は富士屋ホテル、そしてもう一つの大目的が起雲閣へゆくことだった。つまり、熱海へゆくことだ。

そんなわけで熱海に降り立った。

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諸君、熱海だ。

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熱海だ。

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熱海!!!!!

熱海といえば高校の時唯一好きだった先生(めちゃくちゃ嫌われていた)に卒業後なんでか急に道端であって、友人が「肉を食わせろ!」とたかったのに便乗して先生の住む熱海のどう考えても高所得者用の高層マンション(9階)で高い肉を食ったことがあるだけで特にこれと言って他に思い出はない。先生は国語の教師で毎日毎日嫌味を言うので割と嫌われていたけれど私のことを勘がいい子供だと思ってくれていた節があったので私は好きだった。教育実習生をいじめるのが好きでよくそれに付き合っていた。私は教育実習生は全員嫌いだったので先生のことが大好きだった。私と先生のメモリーおわり。

でもよくよく考えたら熱海はいやというほど部活で練習試合しに行ったのかもしれない。嫌すぎて忘れていた。いろんな場所に遠征にいったのでもうよく覚えていない。

しかし熱海には前々から強い憧れがあった。なにしろ私はだざぴっぴが好きなので熱海事件♡キャッキャ♡ってなるし、なにより寂れた温泉街というイメージが大好きだ。秘宝館もあるしね。行ったことないけど。

昨今の熱海はめきめきおしゃれに変わっていると聞いて、ちょっと寂しく感じていたのだけれども、降り立ってみるとおしゃれな熱海は表通りだけで私の熱海はちゃんと路地に残っていた。

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道端に急におおかみが座っている。さいこう。

どの道も最高すぎて、気が遠くなりそう!と声に出して言った。私は昭和に帰りたいんだ。昭和がすきなんだ。平成令和に耐えられれないんだ。

熱海はまだ昭和だった。そのうちここにも平成令和がおっつけやってくるのかと思うとかなしい。ずっとこのままでいてほしいよ。熱海。

そんなこんなで起雲閣にたどり着いた。

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みんなは起雲閣を知っているかい?

私はNHKの百年名家が好きなので知っている。こういう建築が大好きなのだ。こういう、というのは建築に詳しくはないので説明はできませんが、明治大正昭和くらいの木造建築だったり、木造でなかったりもするのですか?わかりませんが、レトロとくくられるようなものなのかもしれない。

ここだけの話、現代建築って気絶するほどダサいじゃないですか。これは別にディスっているわけじゃなくて、まじでただただめちゃくちゃにダサいじゃないですか。どうして昔の格好いい建築を現代で作らないのか、なにか深いわけがあるのでしょうからあまり文句は言えないしこれは文句ではないのですが、まじでくそダサすぎて気絶しそうじゃないですか。なんでなんだろう。どうしてあんなに曲線を使いたがるんだ。どうしてあんなにあらゆる恐怖症に優しくない形のものをつくるんだ。どうして5億年前に描いた近未来みたいな建築ばかりが生まれるんだ。何度も言いますがこれは悪口ではない。

というか私の知見が狭いだけでいい建築がどこかにはあるのかもしれない。でも私はすべてのものにおいて昔のほうがデザインはよかったと思っている。お洋服とかも完全に昔の方が可愛い。わかんない。それは私が低所得層に甘んじているために安い服しか変えないからかもしれない。小物とかだってさがせばかわいいたぬきの置物が現代でもどこかで作られているかもしれない、とはちゃんと思ってます私も。

起雲閣の話だ!

すべての文章をほとんどくまなく読んで回りましたがすべて忘れました。かつての誰かの別荘でそのあと旅館として運営していたものがいつだか熱海さんに買い取られ、今、我々はそのおこぼれにあずかり素敵建築を見学することができる。ありがとう熱海さん!

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まずトイレににこにこトイレットペッパーくんがいるのがとてもよい。

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最初に入ったお部屋から見える非常に微妙な写真。
本当はどう考えてももっと最高な景観なのだけれども、私には何かの能力が足りずに似たような微妙な構図の写真ばかりしかなかった。

名人目だったかな、旅館にしたときの館長だったかもしれないけれども、その人が金沢の出身で砂壁?なんていうんですか、漆喰?名称わかんないけど壁が瑠璃色でたいへん結構でした。お見せできる写真はない。

あのね、正直どのお部屋も絶叫が耐えられない最高さにあふれていてね、とても興奮していて興奮していたという感情しか覚えていない。

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みてくださいよこれ!みえないか?この写真じゃわかんないかもしれないけど、探偵が出てきそうな感じなんだ。絶対だれか殺されるんだ!という期待を感じさせる食堂でもう大変に結構でした。

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この構図が8枚もあった。

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ううん???あんなにいい部屋なのにこの写真はなんだ???

この部屋は天井が硝子っぽい感じで床がタイルでおしゃれな模様になっていて、窓がでかくて貴婦人がレモングラスのお茶を飲んでいそうな感じのやつだった。

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ちがうんだ。もっと本当はきれいなんだ。この構図が7枚あった。

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これは4枚あった。

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よさの伝わらない天井。この日は晴れていましたので、大変にきれいだったのですが、私の写真の技術により嵐の前みたいな風情に。これは5枚。

さて、そうしてなによりここ起雲閣にはだざぴっぴが泊まっておりますので、なめるように見てきました。私は青年期自殺志願者病罹患者のご多分に漏れず太宰治大好き人間なので二十歳そこそこの時に二個下の師匠に青森に連れて行ってもらい、まじで斜陽館だけ見て他に何も見ずにどこにでもある居酒屋に入って帰った旅行とかしてまじであれは楽しかったなぁ。私とだざぴっぴと師匠のメモリー終わり。

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だざぴっぴが山崎富栄と泊まったお部屋だよん。ちなみに私は太田静子推し。敬称略。

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だざぴっぴの泊まった部屋から見える景色となんらかの書。
写真を撮るのがほんとうに下手だねきみは! という気持ちがする。

ともかく昔の別荘めちゃくちゃ部屋があるじゃないですか。すごく羨ましいですよね。その時代に生まれても絶対こんな所に住めないはずなのに、いつもこの時代に産まれたかった! と強く思ってしまう。この時代に生まれてもお前はいいとこ農家の子だよ。

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美しいステンドグラスの横に

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ガンダーラがある。

こういうところもいいですよね。和洋折衷なかんじが大変結構です。あと窓もね中華っぽいデザインがちょこちょこ入っていたりして、全体的にあらゆる文化のいいところ取りました感が最高だ!

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あと風呂がめっちゃこわい。

なんだろう、ローマ風の風呂らしいんだけど、単純に水の入っていない風呂まじこわい。ちょっとこの写真じゃ伝わらないかもしれないけど、おしゃれ床に急に虚あるの怖い。というか私は穴恐怖症なのかもしれない。そんな恐怖症あるか? あるか。

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すごく長いあいだ興奮し続けていたので、クールダウンでお茶をいただきました。庭を見ると新成人が強い和服を来て写真を取っていた。成人式の前撮りだと遠くで婦人が言っていた。

成人式に写真なんてとりましたっけ?
世界で一番頭の調子が悪かったのでよく覚えていませんが、撮るもんなのかもしれない。家の塀の前で家族写真を撮ったかもしれない。やめよう! 暗黒期のことを考えるのは! 未来に悪い。

これね、この左端に見えるおかし。ごま? がまぶしてあるお餅? のようなおまんじゅう? 餅かな? たぶん餅なんですけれども、大変に美味しかったのであとで買おう! と思いました忘れました。お紅茶にはマーマレードジャムをどばっと入れてロシア風にいただきましたよ。

ロシアは偉大! 食べ物がおいしい!

そんなこんなで休んでたら時間が経ってまたお腹が減ってきたので起雲閣と別れを告げ熱海の美味しいお魚を食べるために街を闊歩した。

途中、とても文房具屋さん的な文房具屋さんがあったので立ち寄り、なんでもないシールを二枚買った。テディベアが緑の上でぼうっとしているやつと、なんらかの花束がついているシースルー? みたいななんかそんな。

文房具屋さんには突然煙草がカートンで置かれていたり、墨に麻雀牌とこれであなたもマジシャン! みたいなキットが置いてあり田舎を思い出した。田舎というのは母の実家というような意味の田舎であるがまぁ田舎でもあり、遊ぶところは遠くの温泉と近くのうどん屋しかなく、夏休みの長い帰省の折りなど、家の前にあるきれいめの側溝にいるたにしを集めるくらいしかやるべきことがなく、それにも開きてしまうと近所の文房具屋さんに行って一つだけ好みの娯楽(祇戦闘機とかリリアンとかビンゴの紙だけとか)を買ってもらえたのだった。私と田舎のメモリーおわり。

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外のイケてるはんこ入れの上になんでか石が乗っていた。魔術かもしれない。給料日というはんこを買って楽しい気持ちになろうかと思ったけれど給料が増えないのでそんなに楽しくないなと思ってでやめた。

道中急に熱海と言えばあれじゃん! 三島じゃん! なんか有名な喫茶店あったじゃん! と思いそれほど困難な道のりではさそうだったので向かった。そうして辿りついた。

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これはその横にあるいい感じのロマンス座。
全然知らなかったが今調べてみたら熱海で最後の映画館だったらしい。映画館はなくなるよね。シネコン? ていうんですか? 大きい映画館が出来てから私の小さい頃行っていた映画館もなくなってしまった。入れ替え制ではなかったので一日遊んでいられた。耳をすませばを立ち見で見たのをよく覚えている。押しつぶされなが柵を握りしめながら見たので、いつまでも手が鉄臭かったのを覚えている。あと高校の映画研究会に入ると「映画研究会です!」って言うだけで入れたガバガバの映画館だったので絶対に映画研究会に入ろうと思っていたのに高校に入る前につぶれてしまったし、高校の映画研究会もつぶれていた。私と映画館のメモリーおわり。

さて、ボンネットのお話。

いつかなにかでボンネットのことを読んだのだが、もうすっかり忘れてしまい。インターネッツで調べて「三島~~」って思いながら行った。私は関係性に大変なエモーションを受ける人間なのでだざぴっぴも好きだし三島も好きだ。あなたのことが嫌いですってすごくない!? 私はすごいと思う。

で、ボンネットの入り口の取手に「ただいま満席」と手書きで書かれた看板、というか紙? がぶら下がっていた。ざんねん~(ご飯を並んでまで食べたくない人類なので)と思いながらロマンス座を撮っていたら、マスターらしきおじさまがスッとその紙を回収したので中に入った。

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店内は大変に結構な最高な喫茶店だったのですが、あまりバシャバシャ写真を撮るのも悪かろうと思ってひっそりこれを撮った。気になる人は正規の写真を参考されたし。

喫煙おっけーの純喫茶。大好きだ。最高だ! もうそれしか言葉が出ない。マスターらしきおじさまがごん!ってお冷をテーブルに置いてくれて私はときめきが止まらなかった。本当に、接客とはかくあるべしと思う。大好き。

で、迷いに迷って相当迷って、でもやっぱりここはハンバーガーを食べるべきでしょうと思いチーズバーガーを注文した。

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これがボンネットのチーズバーガーだ!
あとからレタスとたまねぎを挟むスタイル! かっこいい!!

私はその時、ひどく適当な気持ちでポテトを口に運んだのだが、というのも私の知っている純喫茶は純喫茶であることが価値であり、食べ物が美味しいというわけではなかったのので、味うんぬんに対しての思考を一切持っていなかったのだ。

今まで食べたポテトの中で一番美味しかった。

「今まで食べたポテトの中で一番おいしい!」と私は口に出して言った。言ってしまってから、なんてしゃらくさいことを言ってしまったのだ! と恥じたが、それは今まで食べたポテトの中で一番美味しかった。

で、嘘だろ? と思いながらチーズバーガーを食べて、目がひっくり返るほど美味しくて、きょろきょろしてしまった。私はグルメじゃなく、まずい純喫茶の食べ物も好きだし、食に対してあまり大げさなことを言いたくはないのだけれども、まじで世界で一番おいしんじゃないかと思うくらい美味しかった。こんなに美味しいものがこんなにしれっと存在すのはなにか量子力学的な事案が発生しているのではないかと思った。みんな大好きシュレディンガーの猫的な、コペンハーゲン解釈的な、不確定性原理的な。

私はカウンターの奥でしれっと物を作っている女性が実在するのを確認して、すぐに食べ終わるのが嫌でちみちみとハンバーガーを食べた。

そうして食べ終わった頃にはもうポーラ美術館へいくことは不可能な時間になっていた。

実は注目的としてのポーラ美術館へ行く、という催しものがあり、それは富士屋ホテルに泊まった次の日に行くつもりだったのだが『モネとマティス展』はその日が最終日で、行こうと思っていた日は展示替えで休館なのだ、ということにボンネットで気づいたのだった。

なんとか行けるかもしれないと途中までチャレンジしたが、いけても30分くらいしか見られないらしいということがわかり、さすがに馬鹿みたいなので行くのは断念した。いつかいきたいポーラ美術館。待っててねマリーローランサン

というわけで、大目的の富士屋ホテルに向かったわけだけれども、結構長くなったので分割することにする。

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ついてすぐに撮った写真を予告編として、また書き終わったら後半をあげます。これすごいよね、なんかたぶん、鶴と亀で、すごい、なんか、いいよね。富士屋ホテルは本当にすごい。

そんなわけで、後半、まだ二日目じゃないけどふつかめに続きます。